
| 山登りの途中で雨に降られたときなど、寒さでかじかんでいた手足がいつしか感覚を失ってしまうことがあります。ひどい凍傷になると切断を余儀なくされるので、早めに適切な応急処置をしなければなりません。まず、濡れたままにすると体温が奪われやすいので、できるだけ雨をしのげる場所を見つけて、靴下や手袋を乾いたものと交換します。口の中や脇の下、膝の裏側などをつかって患部をあたため、皮膚が白くて水ぶくれなどの異常がないうちはマッサージをしましょう。靴ひもや衣服をきつく締めすぎると血行を悪くするので、適度に暖めることも大切です。血液の循環を促すには、指を動かすようにするのも効果があります。つぎには、山小屋などの屋内に避難します。たどり着いたら、38℃〜40℃のお湯に患部をつけて、ゆっくりと時間をかけて温めましょう。ぬるめと感じる程度にするのがポイントです。熱めのお湯につけたり、たき火やストーブなどにかざすと反対に悪化します。症状が重いと激しい痛みにおそわれますが、30分〜1時間はがまんして、お湯につけておきましょう。また、皮膚に水ぶくれやただれがある場合は、れっきとした凍傷を起こしている証なので、マッサージはしないことです。皮膚をさらに傷つけて化膿させるおそれがあります。そして、お茶やスープなどの温かい飲み物を飲んで体を内側からも温めます。芯から温かくなれば、凍傷の痛みもやわらいできます。その後は、出来る限り早く病院にいきましょう。さほどひどくなくて、しもやけ程度だと思ったときでも、水ぶくれなどが出来たら。治療を受けるようにした方がいいでしょう。 |
| 山のなかで遭難したり、離れ小島に流れ着いたときには、サバイバルのために、とにかく飲み水を確保しなければなりません。もっともありがたいのは雨。地面に触れない限りは汚れがないからです。鍋やコップ、空き缶などを置いて、少しでも多くためるようにしましょう。ビニールシートやテントがあれば、もっと効率よく集めることも可能です。ロープなどで四隅を木から吊り下げ、中央のたるみに雨水がたまるようにするとよいでしょう。早起きして、木の葉についた朝露を集める方法もあります。空気中の水蒸気が結露したものなので、雨と同様、心配なく飲めることが出来ます。気温が上がると蒸発するので、その前にビニール袋や容器に集めるようにするのです。いくらのどが渇いても、水たまりに口をつけるのは無謀です。汚染されている確率が高く、どんな病気にかかるかわかりません。もちろん安全な水場がみつかれば、水を集める手間はいらなくなります。水場発見の手がかりになるのは、植物や生き物。ワサビやフキのような植物、カエルやナメクジ、ヘビなどの生き物がいれば、周囲に水場があるはずです。ハトや小鳥が朝夕に飛んでいく先を目指したり、草食動物の足跡をたどっていく方法もあります。ただし、険しい山の中で低い谷に降りていくのは危険を伴います。森の中で水が湧きだしている場所を探した方が賢明でしょう。運よく水場を見つけても、水中の石が赤茶色や黄色に変色していたり、生き物が棲んでいないようなら毒を含んでいると考えて、飲むのはあきらめましょう。上流に人が住んでいる場合も要注意です。生活用水で汚染されているおそれがあるので、口に入れる前に必ず煮沸殺菌する必要があります。 |
| 野山でキノコをみかけたら、飛びつかず、毒がないかどうかを慎重にチェックしましょう。シメジやヒラタケ、シイタケに似ているもののなかにも、中毒症状を引き起こすものがあります。早とちりは禁物です。まず、横から見て、かさが半円形をしているものには毒があることが多いといえます。軸の部分につばがあったり、根本につぼがあるものも避けるべきです。そして、かさの裏側をみて、ピンクだったり、褐色のしみがあるようなら危険です。軸をたてに裂いて、黒い斑点があるものも毒性のサインになります。毒があるかどうかを見分けるのは専門家でも難しいので、疑わしいものはけっして口に入れないように気をつけてください。もしも食べた後で、毒があるかもしれないと気づいたときには、口の中に指を入れ、舌の奥のほうを押さえて吐き出します。何も症状が出ていなくても、すぐに吐くのがいちばんです。胃の中から出来る限り出すために、何も出てこなくなったら水やお茶をのんで、ふただび吐くようにするといいでしょう。それから体を温かくして、病院に向かいましょう。食べたキノコか吐瀉物を持参して、調べてもらうのを忘れないようにしましょう。キノコの中毒症状は、胃腸障害から視覚障害、幻覚を起こすものまで様々です。しかも、30分から2時間程度で症状が出るものもあれば、1週間もしてから異常を起こすものもあります。ひどいときには命を落とすおそれもあるので、おかしいと思ったらかならず医師の診断を受けましょう。 |
| 「山の中で熊に出合ったら、死んだフリをすれば大丈夫」。これは、熊が幅広い地域で生息する日本で、長い間信じられてきた対処法です。しかし、「死んだフリは効果なし」という説がささやかれはじめているようです。あるシンクタンクの調査によると、北海道で発生したヒグマによる人身事故28件のうち、死んだフリをして生還できたケースは1件もなかったという意外な結果が出ました。生還に成功した被害者は、いずれもカマやスコップなどで反撃していたといいます。なかには、素手でヒグマを撃退した例もあるというから驚きです。ただし、ナタなどで熊に反撃を試みた人の中には、武器を使いこなすことができずに命を落としたケースもあります。どうやら熊に急接近されたため、ナタをふるうことが叶わなかったようです。このような例はあるものの、死んだフリをするよりは反撃を試みた方が生還する確率が高いということはいえそうです。実際、上野動物園の相談室では、熊が空腹であったり、子連れの場合、死んだフリは自殺行為となると警告しているくらいです。また、恐怖のあまり逃げようと走り出すのも命を縮める行為となりかねません。足の速さに自信があっても、熊が本気になれば簡単に追いつかれてしまいます。最善の方法は、熊に出合わないようにすることです。そのためには、腰に鈴をつけるなどして、音を発しながら歩くと有効です。それでは、腕っぷしに自信のない人が、武器らしいものもない状態で運悪く熊と遭遇してしまったらどうすればよいのか。とにかく熊の警戒心を刺激しないよう慎重に行動することが望ましい方法です。静かに熊の様子を観察しながら、後ずさりするように、じょじょに遠ざかっていくのが理想です。このとき、けっして背中を見せてはいけません。 |
| はいはいを始めた赤ちゃんは、床の上のものを何でも口に入れてしまいます。歩き出してからは目線の高さにあるものに興味を持つので、さらに広範囲に目を配る必要があります。乳幼児の誤飲事故でもっとも多いのはタバコです。1本食べたら命を落とす危険性は大ですし、吸い殻や吸い殻の浸かった液体は少量でも大変なニコチンの量になります。灰皿代わりにした清涼飲料水の空き缶に口をつけるケースも多いので気をつけなくてはいけません。もしも何かを誤飲した場合には、水や牛乳をのませて吐かせるのが基本です。親が立てひざをして向かい合わせになり、子供の腰のあたりを抱え、子供のお腹にひざをあてるようにして、舌の奥を指で押すと吐かせやすくなります。2・3回やってみて、うまくいかなければ無理につづけないように注意しましょう。とはいえ、飲んだものによっては、この方法では状況を悪化させることもあるので注意したいところです。 |
| ちょっと一息 その8 乳幼児が誤飲してしまった! |
| タバコの吸い殻は水や牛乳でニコチンが溶けて吸収されやすくなるので、何も飲ませずに吐かせましょう。防虫剤は牛乳の脂肪で吸収が促されるので、牛乳は避け、水を飲ませて吐かせましょう。吐かせない方がいい場合もあります。逆流すると食堂やのどをふたたび痛めたり、気管や肺に入って肺炎を起こす危険があるからです。灯油やガソリン、ベビーオイルなどの誤飲は胃洗浄が必要なので、何もせずに即刻救急車を呼ぶことです。洗剤や漂白剤の場合は、胃の粘膜を保護するために牛乳を飲ませて病院に連れて行きましょう。もちろん、意識がもうろうとしていたり、けいれんを起こしそうなときに吐かせるのは危険です。苦しんでいる場合は、すみやかに救急車を呼ぶしかありません。いずれにしても、あらかじめ誤飲が起こらないようにするのが最善策です。飲み込むと危険なものは、手の届かないところに置くようにくれぐれも気をつけましょう。 |